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 14    バブリーズ・リベンジ prologue
更新日時:
2010.04.28 Wed.
 
男は老いに苛まれていた。
かつて、その手は自信と栄光に満ち、国を、民を自在に動かしていた。
まるで、盤上の駒を動かす、神のような手腕でもって。
 
だが、男は老いた。今はもう、若き日の力は無い。
男は、自らの手を見て思う。節くれだった指、張りを失った皮膚。
これはまるで、死を待つばかりの老人の手ではないか。
 
もはや老人となった男は、しかしまだ天命を受け入れようとはしなかった。
その老いた体の中には、老いてなお消えぬ憤怒の炎があった。
むしろ、自らの老いを知れば知るほどに、そのどす黒い炎は燃え盛った。
 
「…このままでは、終わらせぬ」
 
男は一人、盤の前に座す。目の前に、対戦者はいない。
だが、男の目には、はっきりと闇の中に浮かび上がる顔があった。
 
それも、二つ。
一人は、オーファンの若き王子。
そして、もう一人は。
 
「長きに渡る遊技の決着、つけねばなるまい?」
 
なぁ、スイフリー。
 
己と同じ、類い希なる知略を持つエルフの名を、男は笑いながら口にした。
まるで旧友を呼ぶように親しげに、しかし有りっ丈の憎悪を込めて。
 
「開戦だ。駒を置け。ポーンを、ビショップを、ナイトを、クイーンを」
 
命じる男の側には、もう一つ影が有った。
それまで物言わず控えていた影は、男の言葉に深々と頭を下げる。
 
「…駒を揃えましょう。相応しきポーンを、ビショップを、ナイトを、クイーンを」
 
お任せ下さい。従順な影の言葉に、男はようやく満足げな息を吐く。
 
「駒は相応しい駒でなければならぬ。それがお前にできるか?」
 
「無論」
 
私は貴方の影で御座いますれば。
 
その言葉に、かつて『指し手』と呼ばれた神算の策士は、唇を歪めて笑った。
 
 
 
 
 
 
そんなわけで、ちょっと長いのを書いてみようと思います。
まだリウイも全部読んでないというのに、書かずにはいられなかった。
例のオラン崩壊の顛末について。一体、バブリーズはどう関わったのか?…というお話。
 
 


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